桜樺 -ouka-
祐の恋
蝉の鳴く声が夏のはじまりを伝えている。
私の座る一番後ろの窓際の席からは、幼い頃によく遊んだ大きな桜の木が立つ公園が見える。
楽しそうにはしゃぐ幼児たちと、それを見守りながら微笑んでいるその親たち。
互いを気遣いながら穏やかな表情でのんびりと歩いている老夫婦。
私は鈴木瞳(すずきひとみ)高校3年生。
私には秘密がある。
「瞳〜」
彼は幼馴染みの下田祐(しもだゆう)
『どうしたの』
「今日の放課後、バスケの試合があんだけど見に来ねぇ?」
『無理。私にも部活があるのよ』
「まーた剣道かよ。たまには見に来てくれたっていいじゃねぇかよ〜」
『無理』
即答すると、祐はおねだりポーズプラスウィンクをした。
「お願いします!!」
『はぁ……少しだけね。そしたらすぐ部活行くから』
「っしゃー」
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