桜樺 -ouka-
一息吸うと、みんなに聞こえる声で言った。
『皆さん、聞いてほしいことがあります』
近藤さんと土方さんと目が合うと、ふたりは優しく微笑んでくれた。
「どうした?瞳」
『私、新選組の皆さんと出会えて…共に戦い、共に過ごせて本当に楽しかったです。皆さんが私の生き甲斐でした』
「瞳?なに、さいごの別れみたいに言ってるの?」
総司が心配そうに聞いてきた。
『うん……ごめんね。ごめんなさい。実はもうひとつ、みんなに秘密にしてたことがあるんです』
「なんだよ?秘密って」
『私は今から約150年後の未来から来ました』
近藤さんと土方さん以外が目を見開いた。
『もう、未来へ帰らなくてはいけないんです』
「………はっ。冗談きついぜ瞳」
「そうだよ。桜華の存在を聞いた時もだけどさ…未来から来たって……信じられないよ」
『そうですよね。急にこんなこと言ってすみません。ですがこれが現実なんです。私は何度も未来へ帰らなくてはいけないという現実に背を向けてきました。
ですがいくら目を背けても、季節は巡るんです。たたらちゃんと前を向いて、皆と笑顔いっぱいの思い出を作った方がいいじゃないですか』
大粒の涙が頬を伝っていた。
「瞳………」
『みんなと出会い前は、こんな優しい涙、出なかかった。こんな温かい涙、出なかった。私を変えてくれたのは紛れも無い、新選組の皆さんです…っ』