桜樺 -ouka-
私は、ふらふらとした足取りで夜道をさ迷っていた。
それからいくつかの角を曲がると、丘の上に凛と美しく、桜の木が立っていた。
『桜………』
私だからわかる。
これは紛れもなく私の知っているあの桜の木だ。
『どうして…』
「……見つけた」
ゴッ
声のした方を見ようとした時、溝を何かで殴られた。
────その腕にしっかりと抱きしめて
『え……?』
気を失う直前、そんな声が聞こえた。
その声は、とても美しい女性の声。
“その腕にしっかりと抱きしめて”
どういう意味だろう。