桜樺 -ouka-
「あんさん、芹沢さんとこの女中やろ?」
『え、えぇ』
突然声をかけてきたのは、背に赤ん坊を乗せた女性だった。
「芹沢さん、皆に嫌われてるようやけど、うちはそんなふうに思ったこと、あらんで。
面倒見はいいし、優しいし、時には親もいなく、家もない子供に握り飯をやったりしてるんや。
そんな人が悪い事するはずがあらんやろ」
『私も………そう信じたい…』
「あんさん、芹沢さんを頼むで」
そう言って芹沢さんと遊ぶ子供の元へと向かっていった。
“あんさん、芹沢さんを頼むで”そんなセリフが、頭の中で何度も繰り返された。