桜樺 -ouka-
私は力が抜けてしまい、その場に膝から崩れ落ちてしまった。
「……………」
『お願い……お願いします…』
「新見、行こう」
芹沢さんは、新見さんと数名の隊士を引き連れ、私とすれ違う形で八木邸へと足を進めた。
その時、私が見た芹沢さんの表情は複雑で、何を考えているのか読み取れなかった。
けど、どこか悲しげにも見えた。
そんな気がしたのは単に私の思い過ごしだろうか。
文久3年8月11日大和屋放火事件は、歴史通りおこってしまったのだった。