美魔女オネェに拾われたなら
そうして、連れ帰った後は少し遅いお昼を作ると夏美は手際よく手伝ってくれた。

野菜を切る手は危なげなく綺麗にカットして盛り付けていく。


聞けば一人暮らしで自炊していたという。
苦学生だから節約には自炊だと言った。
しっかりしている。
それも、良い印象になった。


引越し荷物を片付けてる間に、見ると女の子にあるまじきワードローブにびっくりしてサチコと目を合わせると頷くのでヘアメイクを施し買い物に出掛けることにした。


メイクをした夏美はそれはそれは一気に華麗に蝶になった。
女の子が大人になった。
それくらい変わった。
そんな夏美を見ると胸に来るものがあったが、自分はオネェとして出会っている。
娘みたいなものだと、勘違いだと、その胸に湧き上がる気持ちを流した。


そしてサチコと3人でする買い物は楽しかった。
夏美は可愛いも綺麗も似合うしスタイルもよく、コーディネートプロデュースが楽しくて沢山買い与えてしまった。
孫に物を買い与える祖父母の気持ちが分かった気がした。


可愛くて仕方ないのだ。


警戒していた夏美は出掛けてご飯を食べる頃にはすっかり警戒を解き、むしろ懐いていた。


サチコは母の様に夏美を世話して楽しんでいたし、この3人の時間は心地よかった。


和やかに食事の追加をサチコが取りに行っている間に仕事の話を軽くした。
するとあろう事かさっきまであっちゃんと懐いた夏美が、自分を社長と呼ぶのだ。


それを聞いた瞬間激しくモヤモヤとした感情が広がり、あっちゃんって呼ぶ様に少し強めに言った。
公私混同を心配した夏美に、私が許すんだから呼んでと強引にごねた。


その時やっと理解した。


俺は、あの溢れ出たが流した感情は流しきれなかった事…。

この子に久方ぶりの恋をした事を…
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