美魔女オネェに拾われたなら
「それで、仕事の件は了解よ。受けるわ。それで、一体わざわざ足を運ぶなんてどうしたわけ?」
そう聞くあっちゃんが日下さんに向ける目線は胡乱げだ。
「数日前にデパートですれ違ったけど無視しただろ?二人とも。その時に一緒にいたこの三郷さんがね、どうにも気になってな。ここに来ればなにかつかめるかと思って今回は来たわけ。丁度仕事の話もあったし。それで来てみたら、多分ビンゴなんだよねぇ」
顎のヒゲをさすりながら言う日下さん。
そんな日下さんに二人が警戒の目を向ける。
「三郷さん、不躾で申し訳ないが、君はご両親は居るのかい?」
そう聞かれたので
「いえ、母は幼い頃に亡くなりまして。親族も居なかったので私は孤児になり、その後は施設で育ちました」
その私の言葉に目を伏せると再び顔を上げて私を見つめる日下さん。
「私になにか?」
そう聞くと、一つ頷いてから問われた。
「君のお母さんの名前は知ってるかい?」
「麗蘭と聞いていますが…」
「レイラは麗しいに蘭?」
「はい。あの、母のお知り合いかなにかですか?」
そう尋ねると
「お母さんの知り合いから、君のお母さんの話を聞いていた、が正解だ。俺は多分君の父親を知っているよ」
仕事で訪れたはずの人から!まさかの予想もしていなかった存在すら認識していなかった父親の話しにすっかり固まってしまう。
「玲司、どういう事なの?何でいきなりそんな話を?」
さっちゃんが険しい顔をして問い詰める。
「遠目に見ても分かったブルーと淡いグリーンのオッドアイ。お前ら覚えてないのか?大学時代に会ってるだろ?この同じ瞳の色を持ってた奴に」
そう日下さんが言うと、あっちゃんがハッとした顔をする。
「もしかして、エドのこと?私は挨拶程度しかしてなかったけど、玲司とコージは仲が良かったわね」
「あぁ、エドワードね!偏見持たずに接してくれる珍しいタイプの。いい人タイプだったわね」
そうさっちゃんも思い出したのか振り返る。