美魔女オネェに拾われたなら
ブロンドヘアーに夏美と同じ瞳のオッドアイ。
それは俺やサチの記憶にも残る、エドの姿に近い。
『記憶の父親と年々似てくる顔立ちと同じ瞳に、徐々に嫌気がさして来そうよ。瞳も髪も母譲りの黒だったら良かったのにって初めてお酒を飲んだ時に夏美がポロっとこぼしたことがあるの。私が知ってるのはそこまでよ』
そう話し、最後に
『私の所にも夏美からの連絡は無いわ。でも夏美から連絡が来ても教えません。言わないでって言われる気がするから。だから私はあてにしないで。私は夏美の味方なの』
『えぇ、ありがとう。由香里ちゃん』
そうして切った電話。
そのあとはイチとレンに、夏美に名刺を渡していた日下やコージに電話した。
そしてコージに電話したとき、新たなことが分かった。
『夏美ちゃんか。言うなとは言われたが、ここに来たよ』
そう話すコージに
『今は!?』
『もう、ここも出た後だ。今日は落ちつかなくて帰れないとは言っていたぞ。あと、すまんがエドに名前こそ言わなかったが夏美ちゃんがアカリの所にいるのは話してしまったんだ。一月程前に電話でな。それは夏美ちゃんにも謝ったよ』
『そう、エドがその存在に気付いたなら動くわね』
『あぁ、多分そうだろうな…。唯一恋した愛しい相手との間に子どもが居たんだ。エドが諦めるわけが無い。アレの一途さと、一時帰国から戻ったあとの慌てっぷりと落胆は忘れられないからな…』
そう、それはサチや日下。エドも卒業を控えた年の冬。
エドは卒業を前に一時帰国した。
ニューイヤーは家族で。
その言葉に逆らえず、愛しい人を日本に残し一時イギリスへと帰国した。
エドは彼女を卒業と共に帰るときに、本国に一緒に連れ帰るつもりだった。
プロポーズのために指輪も用意して、その話を両親にするためにも帰国したのだ。
しかし、親も説き伏せこちらに戻った時、エドの愛していた彼女は姿を消していた。
あの時のエドの茫然とした姿は覚えている。
何とか探そうと俺達も手伝ったが、彼女の足跡は綺麗に残されておらず、見つける事は叶わなかった。
その後も何度か日本に来ては探していたが、数年後に何とか見つかった足跡を辿った時。
行き着いた先は彼女が既に亡くなっていたという事だった。