美魔女オネェに拾われたなら
「サチコさん、その、着替えてきたけど・・・」


そう声を掛けると



「うーん、やっぱりこのレベルね。まぁ、スカートがあっただけ合格ね!ここ座りなさい。」


そう示されたのは洗面台の鏡の前に置かれた椅子。


「はい…」


おずおずと座ると


「大丈夫!あたしとアカリがうんと可愛くしてあげるわ!」


そういうなりその顔は真剣な表情に変わる。


そして器用に動く手先に見入っているうちに私の髪はあっという間にゆるふわの巻き髪になっている。


「あれ?こんな簡単に出来るの!?!」


驚いて目を見開いて鏡を見つめてしまう私に、クスクス笑ってサチコさんは返事をする。


「そりゃ、あたしにかかればこんなの簡単よ!夏美ちゃんはあたしをどっかで見かけた事ない?」


その問いに私は少し記憶に頭を巡らせる。
確かに、どこかで見た気がした。
どこだっけ?と考えてピタッと思い出した私は叫んだ。


「んーー。ああぁ!カリスマオネェ美容師サチコ!!!」


大学のカフェテラスでキレイめ女子の皆さんが読んでた雑誌のヘアアレンジコーナー、そのページに出ていた美容師さんは紛れもなくサチコさん。



「そんな有名な美容師さんにこんなしてもらっていいんでしょうか?!」


すっかり慌てふためいていると、


「ちょっと、サチ、遅いわ!!」


バーンと洗面室のドアを開けて入ってくるのは、もちろんアカリさん。

「あら、サチはやっぱりいい仕事するわね!次はこっちよ!」


私が持ってるメイクBOXの二倍はありそうな大きなケースを持ってきたアカリさんは大きな洗面台のスペースにそのBOXを置いて開く。


「さぁ、久しぶりにいじりがいのある子に出会ったわね。覚悟なさい!!」


そう言うや否や、私はケープを巻かれてあれよあれよと色々顔を弄られる。


「もー、眉はちゃんと整えなさい!」


言いながらも、動かされている腕に既に整えられてく私の眉。


「お肌のお手入れは良かったみたいね。いい肌してるからファンデはBBにミネラルのフェイスパウダーで十分だわ」


サクサクと塗られてく自分の顔が気になるけれど、


「アイメイクとかするから大人しく目を閉じてじっとしてる!!」



オネェ二人がかりの作業はハイスピード。
指示に抗い止めることは不可能だった。
< 9 / 95 >

この作品をシェア

pagetop