夢を売る少年
気がつくとそこはさっきまでと変わらない教室だった。


「…夢…か。」


なんておかしな夢を見たんだろう。
夢を売る…あの夢は一体なんだったのだろう?


「…ワケわかんない。」


教室には誰もいない。
校庭にももぅ人はいなくなっていた。

座っていた椅子を引き立ち上がる。
ここに来た目的を果たすために…。

窓をめいっぱい開けた―

窓枠に右足をかける―

両手に力が入る―


「新吾に会えますように…」

そう呟いた瞬間、廊下に靴音が響いた。


―誰か来る!


反射的に窓枠から足を下ろした。

心臓の音が早まる。

足音が近づいてくる。

先生か…?


「ごめん、待った?」


そこには、見知った顔の彼が立っていた。


「ど…して…」


声にならなかった。
だって、いるはずがない彼が目の前に現れたのだから―


「あれ?いつもの返事じゃないじゃん。」


いつもの彼の笑顔…あの事故が起こらなければ今も毎日に続いていた笑顔―

でも、彼がここにいるはずもない。


「恵?どうしたの?」

「どうしたのって…だって新吾はっ…!」


それ以上は言えなかった。

言ってはならない気がした―
< 10 / 19 >

この作品をシェア

pagetop