夢を売る少年
「待った?」


何も言えずにうつむく私に新吾が問いかける。

ついこの間まで交されていた会話、なのにとても懐かしく感じる。


「…………。」

「待った?」

「…………。」

「恵、返事してよ。」


変わらない新吾の笑顔、ただ見ているだけなのに涙が溢れる。


「…………いっぱい待った!!」


この声が、顔が、全てが懐かしくて、涙がこぼれた。もぅ会えないって思ってたのに――――




それから二人で他愛もない話をした。
くだらない、いつも話していたような話を。


「恵、俺そろそろ行かないと。」

「え?」

「時間…だからさ。」

「いやっ!」

「恵…」


新吾は少し困った顔をした。
慎吾を困らせたいわけじゃない。


ただ、もう離れるのが嫌だった。


「新吾が行くところに私も連れてって!」

「出来ないよ…」

「いやっ、もう離れるなんて絶対嫌!!」

「いいかげんにしろっ!!!」


今まで聞いたことないくらい新吾の声は怒っていた。

「俺は何の為にお前を助けたんだよ!何の為にっ…」

「新吾…」


新吾の目から涙がこぼれる。

その時ようやく私は気付いた―
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