夢を売る少年
抱き締めている腕に力が入る。

もう会えなくなると分かっていたから―


「恵……ありがとう。」


この言葉を聞いてまた涙が溢れた。

止まらずに溢れていく。


「私も…ありがと…っ」


さよならの時間が近づいてるんだと気づいたけれど気の利いた言葉は何も浮かばない。


「大好きだよ…」

「私もっ、大好きっ…」


同じ言葉を繰り返すだけしか出来なかった。

抱き締めていた新吾がすうっと消えていく。


「ありがとう…………」



その言葉だけが頭の中に響いていた。

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