夢を売る少年
「恵!気がついたの!?」


「おかぁ…さん?」


確かさっきまで教室にいたはずなのに…。

私はベッドの上にいた。

頭や手には色々なものがつけられていた。


「ここ…」

「ここは病院よ、あなた学校の教室で倒れていたの。」

「教室で…」


あのまま落ちて病院に運ばれたのかと思ったけれど、体には痛みも傷もなかった。


「3日間も起きなかったんだから。先生も原因不明だって言うし、お母さん本当に心配したのよ。」


3日間…?


私はあの少年のことを思い出した。確か、2泊3日とか言っていたような………。


「新吾君のことがあったから、学校から連絡があった時、あなたが自殺でもしたんじゃないかってすっごく慌てたのよ。」


どうして教室にいたのか、心配しているお母さんには言えるはずがない。


「しないよ、するわけないじゃない。新吾から助けてもらった大切な命を…。」

「そうよねぇ。でも、新吾君が亡くなってから元気なかったから心配で…」

「もう大丈夫よ、心配かけてごめんなさい。」

「そう?」


私は笑顔で答える。


「うん、もう大丈夫だから――」



うわべだけでなく、心からそう思えた。
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