夢を売る少年
第一章 終章 ―夢の足跡―
「一年前の秋の話なんですけどね。」


恵さんは笑って私に話してくれた。


「もう…大丈夫なんですか?」

「大丈夫!って言い切りは出来ないけど、でもあの時みたいに命を粗末には絶対しないって言い切れる。」

「それはやっぱり…」

「夢を売る少年のおかげ、かな。」

「あの…どんな人だったんですか?」

「それが…よく覚えてないの。制服はうちの学校のものだったんだけど…」

「男子の制服でしたか!?」

「うん、ズボンだったから。」

「そうですか…うちの男子生徒って可能性が高いんですね。」

「多分、だけどね。」

「でも、なんで夢を売る、なんでしょうね?お金とか払ったりしました?」

「ううん、ただ…」

「ただ…?」

「彼とペアで買ったネックレスがどこにもないの。あの日も着けてたはずなのに。」

「ネックレスが?」

「病院で外されたのかと思ったんだけど誰に聞いても分からなくて。あの教室で探してみたんだけど、全然見つからなくて…。だから、もしかしたら夢を売る少年が持っていっちゃったのかな?って。」
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