【短編】夕暮れモーメント
深呼吸をして、ドアをノックする____
ような手つきをしかけて、また手を下ろしてしまった。
待って。
本当に私は何がしたいの?
だけど、聞いてみたい。
尋ねてみたい。
バン!!!!!
…と、勢いよくドアを開けると同時に、背中を向けたまま、きっ、と鋭い視線をこちらに向ける一人の車椅子の男性。
その視線の冷たさ鋭さに一瞬、体がこわばって身動きができなくなる。
その人の口がわずかに動く。
「ノックは」
「あ…失礼しました」
そこでノックを忘れていたことに初めて気がついた。
「ちょっと、頭が回らなくて」
「で、用件は」
「あの、」
勝三さんは相変わらず背中を向けたまま、私に鋭い視線を投げかけ続ける。
「どうして、コンサート見なかったんですか」