【短編】夕暮れモーメント





さて。


ここのホームでの日常は目まぐるしく過ぎていき。


毎日繰り返される忙しい業務をつぎつぎにこなしていくうちに。


12時45分。



コンサートの開演まであと15分を切った。






ちょうど今はお昼の時間。

みんなの前にあるテレビでは、朝ドラの再放送が流れ始めたところだ。

今みんながお昼を食べているこの大広間で、コンサートは開かれる。


舞台は今みんなが見ているテレビのちょうど反対側だ。


私たちはそんな暖かい空間の邪魔をしないようにできる限りの配慮をしながら、後ろでいそいそとコンサート会場の設営に急いでいた。







「ねえひなたちゃん、」


椅子を等間隔に並べていると、少し向こうの方から先輩に呼び掛けられる。
一つ年上の、東先輩だ。



「はい、東先輩、なんですか」



「こっちはなんとか大丈夫だからさ、ちょっとみんなをこっちの方に呼んでおいてもらえないかな」


「はい!」 

すうっ、と大きく息を吸いながらテーブルとテーブルの間をテレビの方に進んでいく。


大勢の前で話すのはかなり苦手。
ここに来てまだ少し克服したほうだ。


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