【短編】夕暮れモーメント



椅子に座ってステージの方を楽しそうに指差す人、それを見ながら嬉しそうにうなずく車椅子の人。


まだコンサートは始まっていないのに、会場は楽しい雰囲気でごった返していた。






「おーい、ひなたちゃん、こっちこっち」



高島さんと東先輩がステージの上から私を呼んでいる。



「えっ、私もステージ上がるんですか」



「当然よー、フレッシュな二人が立ってなくてどーするの」


はい、と東先輩にマイクを手渡されながらステージに上がる。
ステージ、とはいっても高さ30センチにも満たない、かなり低めのステージだ。
マイクは真ん中らへんの手に当たるところだけが少し暖かかった。




正面の大きな時計が1時を指す。


それと同時にどこからともなくクリスマスの楽しいメロディーが流れてくる。




「みなさん、ようこそお越し頂きましたー!」


高島さんのはつらつとした明るい声が響きわたりイベントが始まった。


ステージの前は笑顔、笑顔、笑顔。

たちまち拍手が沸き起こる。





ここまではまだよかったのだ。


ここまでは。



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