裏生徒会部+
見せてくれた画面に映っていたのは私と柊也。
凪さんが振り向いたからと柊也が私の顔が見えないように隠してくれた時の写真だ。
事情を知らなければ、柊也が私を抱きしめているようにしか見えない。
「えっちょっ…凪さん!?」
「どうやら楽しんで頂けたようでなによりでした」
凪さんはあの時、わざと私達の方へと振り向いたらしい。
そしてあのようなこととなり、すかさず写真を撮ったと。
「消してっ!!恥ずかしいっ…!!」
「大切な家族の写真を消すわけにはいきません」
「…ずるい……。あっ!柊也!柊也も映っちゃってるから!」
「柊也様も将来的には家族になりますし」
「えっ…う……」
凪さんの意地悪に言葉を詰まらせていると、私の携帯の着信が鳴った。
メールだが、この会話から逃げるようにすぐさま開く。
『2月13日に家庭科部でチョコ作りをするんだけど、良かったら浅井さんも来ない?』
と、姫路くんからだった。
料理下手、センスもないと周りから言われている私はやんわりとそのことを伝えると『じゃあ練習しようよ』と返事が。
そして、作る日の本番13日以前からこうして家庭科部へと行き、教わっている。
「チョコはとりあえずいいとして、他に作りたいのとかある?」
「出来ればチョコ以外の…チョコに合いそうなお菓子とかあるかな?」
「チョコに合いそうなお菓子なぁ…」
なぜバレンタインだというのにチョコ以外のお菓子を作ろうと思っているかというと、そのお菓子を渡そうと思っている相手が間 仁(ハザマ ジン)だからだ。
学園一のモテ男は毎年大量のチョコをもらっている。
その様子を去年見たが、後ずさってしまう程凄い量だった。
ちなみに、仁のバレンタインデーは1週間前程から始まる。
14日は勿論、その前後の日は直接渡したいという子達で仁は囲まれる。
だから当日じゃないとしても、どうしても直接渡したい子達は1週間前程から渡すらしい。
もはやバレンタインデーではなく、バレンタインウイークだ。
まぁそんな話は置いといて、チョコばかりだと飽きそうだからチョコに合いそうなお菓子を作ろうと思っている。
「ホットケーキとかワッフル…ソフトクッキーなんかはどうだ?」
「いいかも!」
「浅井さんチョコだけであないな様やからなぁ。作れるんか?」
「うっ……」
「ソフトクッキーなら大丈夫だろ。混ぜて型作ってあとはオーブンで焼くだけだし」
「ちっちっちっ。甘いで〜甘々やで〜唯ちゃん。浅井さんはそんな失敗する要素がなさそうでも……失敗するんや!」
「くっ……」
なにも言い返せないのが悔しい。
そして妙な間が腹ただしい。
私だってこんな簡単な作業で失敗するわけがないと思っている。
だけど不思議なことにいつの間にか失敗しているのだ。
上崎くんは苦笑いをした後、中西くんを自分の方へと引き寄せた。
「まぁ、俺と大貴も手伝うからさ。がんば」
「ああーっ!!」
急に聞こえた声の方へと一斉に目を向ける。
入り口で此方に向かって指をさす子と両耳を塞ぎ迷惑そうにしている子がいた。
おそらく、指をさしている子が大きな声を出したのだろう。