裏生徒会部+
指をさしていた子はずんずんと近づいてきてバンっとテーブルを叩いた。
涙目なのかうるうるとした目で机から身を乗り出す。
「私という可愛い彼女がいながら浮気をするなんてっ…しぇんぱいひどい……」
「浮気って…ただ話してただけだろ」
「ただ話していただけ!?どこがですかっ…肩に手を回してるじゃないですかぁっ!!」
「そっち!?」
上崎くんは慌てて中西くんから離れる…ことはなく、呆れた顔で女の子を見ている。
中西くんも私もどうしていいのかわからずただ呆然と2人を見ていると、先程耳を塞いでいた子が近づいてきた。
「あんたねぇ。急に大きな声出すんじゃないわよ、うるさい」
「だって彼氏の浮気現場をこの目で見ちゃったんだもん…」
「だから浮気じゃねぇって。大貴なんてこっちから願い下げだ」
「なんやと!?」
「はいはいはい、ちょっと全員黙って。困ってるでしょ」
私と目が合うと耳を塞いでいた子はこの場を静止してくれた。
まず、大きな声を出した子は篠原 千聖(シノハラ チサト)ちゃん。
そして耳を塞いでいた子は神田 佳代(カンダ カヨ)ちゃん。
2人とも1年生で家庭科部に所属しているようだ。
「そうだ。お前らバレンタインに何か作るって言ってたよな?」
「もっちろんですよ!先輩に私の愛がたーーーっ」
「佳代は?」
千聖ちゃんは未だに「たー」を伸ばし続けているが、それは問答無用で無視して佳代ちゃんへと話を振る上崎くん。
「あたしは人数が多いのでクッキーでも作ろうかと思ってますけど」
「お。ちょうど良かった。浅井もソフトクッキーを作ろうとしてるんだ」
「そうなんですね。それで?」
「俺や龍司が付いててやれない時は佳代が見てやってく」
「っぷり詰まったチョコをあげますから!!」
「話を割るな。うるさい」
「うっ……」
素早く上崎くんの元へと駆け寄り、腕に手を回す。
そして背伸びをしてぐっと顔を近づけた。
「先輩は私からのチョコがいらないんですかっ…!!」
「急になんだよ…ひっつくな」
「いらないんですかっ…!?」
「…あーもう!いるに決まってんだろ。なんなら俺もお前に作ってやるぐらいだよ!」
「えっ…先輩っ…!!好き!!」
「うわ…まーた始まったでナチュラルイチャつき……」
中西くんと佳代ちゃんは見慣れているようで、呆れた顔で2人を見ていた。
佳代ちゃんは溜め息を吐いた後、私へと目線を向ける。
「えーっと…多分あたしと浅井さんが一緒に作れって話だったんでしょうけど、浅井さんはそれでいいですか?」
「佳代ちゃんが良ければ是非お願いしたいな。私料理下手だから…」
「そうなんですか?」
「せやで〜。篠原より酷いで」
「えっ千聖より?」
千聖ちゃんの料理の腕前は知らないけど、中西くんの言いようや佳代ちゃんの顔を見れば想像はつく。
そして私はそんな千聖ちゃんよりも下手なレベル、と。
「ま、まぁ1度作って見ましょう!中西先輩はあんまりあてになりませんし」
「はー?そんなん言えるのも今のうちやからなぁ、神田」
中西くんの期待よりも佳代ちゃんの期待に応えれるように頑張ろう。