裏生徒会部+
「す……凄い…」
「なんでや…なんでやねん……」
出来上がったクッキーを見て驚きを隠せない様子の2人。
私が中西くんの期待に応えてしまったのか。
それとも佳代ちゃんの期待に応えることができたのかは一目瞭然だった。
「ほとんど一緒にやっていたはずなのに…」
「一瞬にしてこないなってしまうとはなぁ…台所の錬金術師やわ…」
「無駄にちょっとかっこよく言うのやめて」
出来上がったクッキーはもはやクッキーと呼んでいいものかわからない物体となっていた。
どこで失敗をしてしまったのかは見守っていた2人どころか、私自身もわからない。
一応味見を、と全員手を出そうとするがすぐに引込められる。
黙ったまま出来上がった物体を見つめていると、佳代ちゃんの後ろから抱きつくように千聖ちゃんがやってきた。
「何なに?出来たのー?」
「ま、まぁ…出来たわよ」
「わぁーこれ?私と同じぐらい酷いですね、静音先輩。どれどれ…」
躊躇なく私の作った物体へと手を伸ばし、そのまま口へと運ぶ。
「さすが慣れとるなぁ…」とある意味感心したように中西くんは呟いた。
普段、千聖ちゃんもよく失敗するらしく、こんな物体であれ躊躇なく味見できるらしい。
「んー……んん?…んー…」
「何?どういう反応なのよ、それ」
「んんー…味が……ない」
「んなアホな。この見た目からして焦げの苦みとかとりあえず不味いとかあるやろ」
「中西くん、とりあえず不味いって何」
「本当ですよー!皆も食べてみればわかります!」
そう言われ、作った自分自身も恐る恐る物体へと手を伸ばした。
目を瞑り、口の中へと放り投げ、顎を動かす。
食感はある。が、どれだけ噛んでも味が見つからない。
「どうなっているの…味がないなんて……」
「なんやこれ……台所の魔術師や…」
「だから無駄にちょっとかっこよく言うのやめて」
不味くはなかったものの、味がないのは失敗ということだ。
…見た目からしてもう失敗だけど。