裏生徒会部+
教室に入ると待ってましたとでも言うようにすぐに中西が此方を向いた。
それに続き、月森も目線だけを此方へと向ける。
「一ノ瀬おはよーさん!遅いでー!」
中西のどでかい声に反応してか机にうつ伏せていた奏十は頭を上げる。
そして眠たそうに欠伸をしながら振り向いた。
「おはよう、奏十」
「はよ、柊也」
「俺は無視かいな!?」
椅子を引き、席に座ろうとすると机の上に見覚えのない物が置いてあることに気がついた。
ラッピングされた小袋。
先程の中西の反応と見た目から察するにおそらくはチョコ。もしくはお菓子だろう。
誰からなのかはわからないが、少なくともアイツからではないのは確かだ。
「隅に置けへんなぁ~一ノ瀬~」
「まったく物好きな奴もいるものだな」
「最初は奏十にあげるんやと思ったら一ノ瀬やからなぁ…あ。そういえばあの1年生家庭科部に来とったな。名前は知らへんけど」
月森は腕を組み、俺の机の上にある物へと目線を流す。
1年の女子で家庭科部…。
そもそも1年の女子の知り合いといえば宮井、黒崎 嵐(クロサキ ラン)、稜香…それから香月の4人くらいだ。
宮井は裏生徒会部と写真部だから家庭科部ではない。
嵐は家庭科部どころか部活にすら入ってないだろう。
稜香はさっき悠から受け取ったし、生徒会に入っている香月のことなら中西でも知っているはずだ。
この4人ではないとするとあとは……あ。伊藤?
いや家庭科部にいるって柄じゃないしな。
「で、誰なんだ?」
「俺も名前は知らねぇんだよな。ほら、前にも1度来たことがあったろ?」
「前にも?」
「12月くらいだったっけな。お前が俺の買ってきたチョコパン取った時だよ」
そう言われ、思い出した。
佐野 美琴(サノ ミコト)。
数えるほどしか話したことはないし、会話らしい会話もしたことはない。
だが、12月になぜか告白をされ、断った…はずなんだが。
「諦めたわけではありませんから」と言っていたのは本当だったようだ。
「私が直接渡すと受け取ってもらえないかもしれないから、って言ってたぞ。ちゃんと受け取って食べてやれよ?」
「せやで一ノ瀬。そないなこと言わせるとか酷いで」
「まぁ一ノ瀬が最低なことは今に始まったことではないが、せめて受けとるんだな」
なぜか俺が3人に責められた。
わざわざ返しに行くのも…な。
小袋を手に取り、鞄の中へとしまった。