裏生徒会部+


昼休みになり、購買へと向かっているとたくさんの話し声が聞こえる中、急に肩に重みを感じ、耳元で声が聞こえた。


「しゅ・う・や♡」


振り向こうとしたがそれよりも先に腹に手を回される。

振り向かずとも声とこの行動で誰なのかはわかった。

数人が此方にちらちら視線を向けている。

学園内一といわれている美人がこんなところで男に抱きついているからだろう。

しかも彼氏でもない奴に。


「こんなところで抱きつくな」

「じゃ、こんなところじゃなきゃいいのね?」

「そういうことじゃない」


俺を捕らえている手を解こうと、手首を掴む。


「柊也から手を握ってくるなんて嬉しいわ♪」

「そんなわけねぇだろ」

「照れなくてもいいのにー」


溜め息を吐き、歩き始めると抱きついた状態のままついてくる。

真夜の姉、栗原彩花。

周りに人がいようと、もはや彼氏が目の前にいようと関係なく、俺に会う度に抱きついてくる変人だ。

しかも離そうとしても見た目と打って変わって結構力が強い。

そしてポジティブの塊。

周りの視線を感じながらも購買へと行き、昼飯を買い終わって教室へと戻ろうとしていると後ろに体重をかけられ足が止まった。


「はい、柊也。そこ右に曲がってー」

「なんでだよ。俺は教室に戻る」

「だーめ。私と一緒にご飯を食べましょう。だから新聞部へレッツゴー♪」

「嫌だ。つーか、笹島がいるからいいだろ」

「しんくんはいないわよ」

「いない?休みか?」

「違うわ。今日は色んな女の子に呼ばれて大忙しなの」


そう言われ、察する。

今日はバレンタインだから、ということだろう。

栗原とその彼氏である笹島慎二はバカップルとして有名ではあるが、バカップルの前につく言葉が2つに分かれている。

美男美女もしくは美女と野獣。

今となってはキラキラしたものが見えてきそうなくらいイケメンになった笹島だが、数ヶ月前までは髪はボサボサで変な眼鏡を掛けていた。

そのせいで笹島が変わったことを知らない人達もいて2つに分かれている。

その知らない人達はまさか同一人物だとは思わず、彼女がいるとも知らずに告白してくるらしい。

まぁ月桜は人数が多いしな。


「っていうことで行くわよー♪」

「だから行かねぇって。教室に戻る」

「そう。じゃあこのまま柊也の教室について行くわ。私は柊也がいるなら別にどの場所でもいいもの♪」


顔を見るとにっこりと笑う。

俺がどうするかをもう分かっている顔。

…どうしていつもこうなるんだ。


< 63 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop