裏生徒会部+
放課後になり、俺は生徒会室ではなく軽音部の部室へとやって来た。
てっきり昨日と同じく生徒会室だと思っていたために不思議に感じながらドアを開く。
「ノックもせずに急に入ってくる奴は誰だー!?ってうわーっ!?」
「何だよ急に。俺の後ろに隠れるな、緒方」
部室へと入るとすぐさまに人差し指を向けられたのだが、俺と目が合った瞬間に凄い早さで柳沢の後ろに隠れた。
軽音部に来たのは数ヶ月ぶりなのだが、その初対面時に俺の顔に丸めた紙をヒットさせたことを覚えていたらしい。
「あっ!前にギーくんの相棒を届けてくださった方ですね!」
自分の体の大きさ程の赤いギターを抱えた小柄な女子…神谷 玲奈(カミヤ レナ)は軽く会釈をする。
その言葉を聞いて「あぁ…」と思い出し、緒方がなぜ自分の後ろに隠れたのかも納得した様子の柳沢 響(ヤナギサワ キョウ)。
柳沢の後ろに隠れたのが緒方(オガタ)。
ということは、前に来た時は神谷と柳沢しか名前と顔が一致しなかったが、消去法でいくとドラムの前に座っているのが藤本 千鶴(フジモト チヅル)だろう。
そしてもう1人いる人物は仁のはずなのだが…赤いニット帽を被り、黒髪。眼はオッドアイ。
ネクタイはしておらず、上靴ではなくスニーカーを穿いている。
仁じゃない上にこんな奇抜な恰好をした奴は初めて見た。
その男と目が合うと「よっ」と馴れ馴れしく挨拶をされた。
「えっ!?今日先輩が来るって言ってた人はあの人なんすか!?」
「そうだけど、なんでそんなに柊也にびびってんだよセナは」
「色々ー…ありましてー……」
聞き馴染みのある声。俺が来ると言っていたということは…
「もしかして仁か?」
「おう。そういやこの恰好で会ったことなかったな」
髪はウイッグ。片眼はカラコン。普段はしていないピアスや指輪などの装飾品。
ネクタイと上靴は学年がバレないように着用していないという変装をした仁だった。