この世界は7で終わる




_388年12月20日





昨日とは打って変わり、どこまでも続く曇天。雨は降るだろうか?ーーーそれさえも分からぬまま、私達は植物のツタが壁を飾る廃れた建物で身体を休めていた。



昨日から、いや村を出てからどのくらい進んだのか。地図も、コンパスも、旅の必需品は全て置いてきてしまった。そのツケがここにきて回ってくる。



「ここどこ?」

「知らない」

「だよなー」



こんな野心のない旅人も珍しい。けれど、阿呆だろうがなんだろうが私とルカはそれでいい気がした。目的地なんてないのだから地図を見ても不毛なだけ。


これはそういう旅だ。







「アトリ、水くれ」



そしてルカは昨日と、少し変わっていた。 


 
「だめ。さっき飲んだでしょう?」

「喉乾くんだよ」

「…なおさらだめ、」



リアカーから身を乗り出し、「ケチ」やら「性悪」やら人を貶している姿は無駄に自我を持ってしまった赤ん坊のよう。加えて、乳母車がこんなボロボロな木材で出来ているのがなんとも面白い。



「陽が落ちてきたね、」

「今日は歩きっぱなしだったなー」

「疲れた?」

「いや。アトリだろ?疲れてんのは」



そう言いながらもルカが右手で喉を抑え顔を顰めた。それを私が見逃すはずもないーーー・・でも、言えなかった。


「大丈夫?」って聞いても「大丈夫」と返ってくるだけ。いくら喉が渇いていても、水を渡してあげられない私に、そんな同情まがいの言葉を彼に言う資格はない。




水はちょうど一週間分。食料は非常食やレトルトパック、そして缶詰。服は防寒になる程度。これで私達はどこまで行くのか。





ーーーーそれは誰も知らないこと。



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