この世界は7で終わる
夜はやることがない。こんな暗闇の中を光もない私達が歩くには些か不便で仕様がないのだ。
だから夜になれば火を起こして暖をとる。それだけだ。リアカーに積んだ荷物の中から缶詰を一つ取り出してみた。
「(缶切り、ないや…)」
数分後にはレトルトの食料で空腹を満たしていた。
数日しか付き合っていないのに、ボロなリアカーも今や馴染みの家族みたい。そして、そこから動かないルカに私は声を掛ける。
「ルカ、今日もそっちで寝ていい?」
「狭い、」
「いいじゃない。あったかいんだもの」
「……お前体温高いしな。いいよ、おいで」
なんだかんだ、ルカは優しい。
幼馴染で許婚、私達は来月結婚する筈だった。昔、それこそ世界がこんな風になる前は結婚にも年齢の壁があったと聞く。でも今では歳の制限なんてない。あるのは本人同士の合意だけ。親も親戚も、誰の許可もいらない。私はそれが素敵だと思う。
「ねぇ、結婚はいつするの?」
「確かに。村出たわけだし式も出来ないよな」
「…ルカ、」
「やっぱり24日か」
なんてロマンチック、とは残念ながら思えず。
ーーー24日はクリスマスイブ。
西暦という暦があった頃の、イベントの前夜にあたるらしい。ある国では家族と過ごし、ある国では恋人と過ごす日なのだという。何も知らない私にとってはヘンテコなイベントとしか思えない。
それに、私達にとってはそれだけじゃない。
「ルカ、本当に?」
「キリがいいだろ。俺も、お前もさ」
「そうだね」
「アトリ、予定より少し早いけど許せよ」
許すよ。許してあげる。
特別よルカ。