夢愛
零章 笑顔の似合う彼と無愛想なわたし。
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―――愛と恋はなにがちがうと思う?
「……いきなり、なに?」
「なんとなくー」
「……はぁ。」
わたしの前でにこにこ笑いながら話す男の子。
真っ黒な黒髪で少し跳ねた癖っ毛に丸くて大きい目も同じく黒く、笑顔がよく似合う愛想のいい2つ年上の……仲のいい男の子。
「なんでため息つくかなー」
正直どうでもよ過ぎて。とは言えなかった。
「別に、興味ないし。」
わたしは彼に比べて無愛想だし彼みたいに興味を持つ事も少ない。
「またそーやって。他の事に興味を持つ事も大事だと思いますよー。」
例え、どんなに無視しても相手にして欲しくなくてもしつこいくらいに一緒にいてくれるから、半分諦めがついていた。一緒にいるうちにまったくわからない感情が心の奥底から芽生えてきていてもきにもしなかったのは、この気持ちをまだ良くはしらなかったから。
そんな無愛想なわたしをちゃんとみてくれる彼の名前は……
「……は、なんであの子たちと遊ばないんだよ。」
突然の事に「え?」という声が無意識に漏れる。
「身体、弱いんだろ? だけど、中で遊ぶ事だってできるじゃん」
彼がわたしの名前を呼んだけど、それが無かったかの様に耳に届かなかった。
「わたしみたいな無愛想女と一緒にいる変わり者はキミだけだよ。」
また屁理屈の様なことを言ってしまう。
どうしてもこの癖だけは治らない。
「言うね〜……まぁ、俺でよかったらずっと隣にいてやるよ。」
そう言って立ち上がった彼はわたしの頭に手を置いて眩しい笑顔をわたしに向けた。
彼のその言葉はわたしにとって心の支えだった。正直、嬉しかった。だから、わたしは「バカじゃないの」と言って苦笑した。
その日、たくさん彼の話を聞いて、最後に彼はポソリと1つ呟いた。
お別れの言葉。
「俺は遠くに行っちゃうけど、……は、元気にしててくれよ。そんで、俺が帰って来たら、……ずっと、言いたかった事を伝えるから。」
本当に突然過ぎた。だけど、帰ってくると聞いて安心した。
「ちょっ、なんで泣いてんの。」
自分でもよくわからなかった。だけど、彼がいなくなったら、寂しいって気づいた。
「なんで……? なんで急に……?」
そんなわたしの涙を拭って彼は、
「大丈夫。あ、そうだ、だったらこれ、預かっててくれないかな?」
そう言ってわたしの首に掛けてくれた彼と同じくらい輝いてるネックレスをわたしに預けた。
彼がどこかにいくのは早くて、ただ帰りをネックレスと共に待つだけだった。
その翌日、わたしはほんの少しの記憶を残して彼を含めた全ての昔の記憶を無くしてしまった……。
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