夢愛
一章
朝。最悪の目覚め。
窓の外からカーテンを貫通して綺麗な朝日が彼女のいるこの空感を明るくする。
夢を見た彼女はまだ目を開けたくないと思っていても瞼の上から眩しい朝日が邪魔をする。
仕方なく起き上がった彼女は机の上のメガネを手探りで探す。
かなり視力の悪い彼女は学校の日にはメガネをして、オフの日などはコンタクトをするようにつかいわけているらしい。
夢月むう(ゆめつきむう)。それが彼女の名前だ。
朝日に照らされた金色の長髪は子猫のように柔らかくレンズの中の瞳は色素の薄い緑色。まったく焼けていない真っ白で透き通った雪のような柔肌。目は大きく見開かれない切れ長だが、下向きに垂れていてまつ毛もかなり長く、鼻や口は小さいが整っている。いわゆる美人というものだろうか。
とりあえずメガネをかけてそばにあるネックレスを細い小首に慣れた手付きで素早くかける。
彼女自身もどうしてネックレスをかけているのかわからないが最初見た時からネックレスを触ると気持ちが凄く安らいだ。
懐かしい気持ちになったというのだろう。
制服に着替えて1階のリビングに降りて朝食を食べる。
今日はお母さんが居なくて自分で用意しなくちゃいけない。お父さんも同様、朝から忙しいらしい。
時計をみるとまだ時間に余裕があると安心するが、7時丁度の今、外からいつもの声が聞こえてくるはず。
「むーうー! がっこー行こー!」
ほら。外から叫んでてリビングまで聞こえるという声の大きさ。
さすがは女バレのスタメン。(スタートメンバー)帰宅部のわたしには到底ムリな話。
だけど、無視するわけにもいかない。
わたしは朝食のパンとカバンだけ持って外に出た。
「あ、おはようさんでーす。」
呑気に挨拶をしてくる同級生の同じクラスの渡辺雛乃(わたべひなの)。彼女は元気の塊の様な存在で大きくて爛々とした茶色の目に短めの眉。顎ラインまでの茶髪で若干巻きぎみ。前髪は額が見える様に上げて青いゴムで縛っている。ちょっとだけ日焼け残りのある肌が元気の主張だろう。
「おはよ」
手短に挨拶をするわたしの腕を引いて早足で歩く雛乃。
雛乃はいつも笑顔でわたしに元気をくれる。そのお陰でいつも楽しくやっていけてるわけです。
徒歩で歩く事三十分。そのくらいの時間で着くくらいわたしと雛乃の家はこの学校に近い。
「そういえば、昨日ね。男バレの2年の先輩がむうの事好きって言ってたよ」
「そう……なんだ。」
「えー、反応うっす。もっとさ、「ウソでしょ〜?」とか「マジで〜?」とかないの?」
「無いわよ、そんなの。」
だって興味ないし。どーでもいいし。そもそも、恋愛感情とかよくわかんないし。
その男バレの2年の先輩って人の事も全然しらない。
「ふーん。まぁ、むうらしいね。」
「どういう事よ」
とくに変わった事はなく今日も一日過ごせそう。……と、おもっていた。