ティールームの不思議な出来事
「今日はもう、帰ったほうがいいね。風邪をひいてしまうよ」

「そうだな」

 駅の近くに止めた彼の車へと向かう。

 家まで送るという彼の言葉に、首を横に振った。

 一人にはできないと思ったけれど、隣に誰も寄せ付けない雰囲気だったから。



 数日後、社内で彼の同僚が噂話をしているのを聞いた。

「あいつさぁ、最近元気がないよなぁ」

「彼女と喧嘩でもしたのかなぁ」

「俺さぁ聞いたんだけど、あいつが前に付き合っていた彼女が最近、交通事故でなくなったらしいよ」

 前の彼女?

「あぁ、あの髪の長い綺麗な人だったよね」

「でも、あいつには今は別の彼女がいるじゃん」

「そうだよなぁ。いくら前の彼女だといっても、別れたんだしなぁ」

 そうだったんだ。

 自分の知らない彼の前の彼女。

 本人に聞くべきか、それとも聞かずに、今までと変わらずに振る舞うべきか。



 そして、次の日曜日。

 彼は表面的にはいつもと変わらずに振る舞っていた。

 何も自分から聞かないと決めた。

 彼は海の見える駐車場に車を止めた。
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