ティールームの不思議な出来事
「この前は悪かったな」

「ううん、いいの。もう過ぎたことだから」

「そういうわけにはいかないよ」

 数秒の沈黙が続いたあと、彼は口を開いた。

「あの日、出かけ前に家に電話があって。友人が交通事故で亡くなったって、連絡があったんだ。1年ぐらい会っていなかったんだけれど、仲良くしていたやつだったからさ」

 友人?

 前の彼女じゃなくて?

「友人って学生時代の?」

「そう。言っておくけど、男だからな、その友人って」

 否定する彼と、彼の同僚が言っていた話。

 どちらが嘘でどちらが本当なのか。

「別に疑ってないわよ」

 強がってみる。

 彼の言葉を信じるしかない。

「大事な友人だったのね」

「うん・・・」

 彼の言葉を信じてみることにした。



 今、思えば、この頃から少しずつ、歯車がずれていたのかもしれない。

 お互いの仕事が忙しくなり、週末のデートも数が減っていった。



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