ハチミツとレモンサイダー
親友の唐突な言葉に首を捻る。
「いつもはテスト前になったら勉強しなきゃって騒いでたのに。
忘れるなんてねー?」
「あ、あぁー……」
「仕方ねーよ。
いつもボケーッとしてるし」
「ばかおる! うるさいー!」
「だからそこ くっ付けんな!」
薫の余計な一言にはムカついたけど。
おかげで杏華の質問を上手くはぐらかせたから良しとしてやるか。
それに言えない……。
言えるわけない。
薫のこと好きで、でも親友を応援したい気持ちもあって。
でもいざ……2人で幸せそうに笑う所をこれからも当たり前のように見ていくんだって……
そんなことばっかり考えてたら勉強なんか手につくはずもない。
「やっぱり……何かある?」
「え?
い、いやぁ?
何にもない何にもない!」
お願い……お願いだから……
そっとしておいて。
まだ自分自身でもその傷に向き合えない。
でもあたしは……きっと杏華を責める筋合いも無い。
当たり前、だよね。
親友に初めて嘘ついてるんだから。
杏華にだけは絶対に嘘つかないんだって……決めてたはずだったのに……。
情けない。
何もかも自分が情けない。
涙なんてものも出ないほど。
きっとそんなに純粋で哀しい気持ちじゃないから……
誰かを責めたくなって、羨ましくなって、妬ましくなって。
あたし……そんな人間なんだ……。
綺麗事を並べた綺麗じゃない人間。
それが……今のあたし。
こうなりたかったわけじゃないのに……。