ハチミツとレモンサイダー
「だから、もう……放っておいてくれない?
アンタが不満なら視界にも入らないようにするし」
押し殺して、騙している心に誰もこれ以上触れないで。
「……まあそういうことであたし帰っ……」
立ち上がろうとした所でまた止められてしまう。
「……んなこと別に聞いてねえ。
勉強しろって言ってんだ」
……なんだろ。
あたし頭おかしくなっちゃったのかも。
なんで……コイツの声が……優しく聞こえたんだろ……。
……多分、失恋のせいだよ。
そうとしか言えないわ。
「……あたしもさ硝子のハートなわけ。
アンタに色々言われんのも傷付……って聞きなさいよ!」
コイツときたら人の話も知らん顔で自分のノートを半ば無理やり机に突き付けてきた。
「ごちゃごちゃうるせぇ。
寝るから邪魔すんな」
「あ!
ちょ……っ」
……コイツぅ!
速攻でガード作って寝入る体制だし!!
「……なんなの……もうっ」
……うわ、字綺麗すぎでしょ。
認めたくないけど分かりやすい……
アイツが突き付けてきた数学のノートをペラペラ捲る。
しばしそんな小さい音だけが響いて。
「……ふふ」
でも、さ。
あたし分かってるよ。
アンタが本当は寝てなかったってこと。
だってさっきから気付かないフリしてるけど、こっち見てる時あるし。
言ったらまた暴言ぶつけてくるから黙っておきますけど。
なんだか優越感に浸ったみたいで勝手に口元が緩んでく。
冷たいし、すぐ暴言吐くし、あたしのこと人としても見てないみたいだし。
でも……ちゃんと人間らしいとこあるじゃん。
ほんの少しだけ光里遼雅を見直した、今日はそんな特別な日になったことは。
本人には当分秘密にしておくことにします…────────