千の春
「あった!」と叫んだのは2分も経たないうちだった。
「この人だよ!27で死んだ、平成の奇才って言われてたヒュウガ!」
本名は谷原 日向だって、と言う丸井くんの声は頭に届かなかった。
なぜなら岬の目は丸井くんのiPhoneの画面に釘付けだったから。
五年前に亡くなった、大学の先輩。
油絵を描いていた。
ツンツンとした髪。
黒縁メガネ。
見慣れた、当たり前にそばにいたその人物。
隣人の日向が、そこにはいた。