神様の隣で、君が笑った。
 

「り、陸斗くん……?」

「……チッ」


ビー玉のようなブラウンの瞳が真っ直ぐに私のことを睨みつけていた。

いつもは静かな大地のようなその色が、今は苛立ちと怒りで揺れている。


「な……っ、山田、お前なにして……っ」

「テメぇは、それでも教師かよ」

「……っ」

「アンタも。言いたい放題言われて、黙ってんじゃねぇよ。言いたいことがあるなら堂々と言え! 自分自身のことだろ!」


その言葉は真っ直ぐに、私の身体を貫いた。

自分自身のこと。陸斗くんの、言う通りだ。


「山田、お前、何を言って……」

「俺、前に言ったよなぁ。違うと思ったことは主張しろって。だから、言えよ──菜乃花。今のアンタには、その権利があるんだから」


──菜乃花。

そのとき初めて、陸斗くんに名前を呼ばれた。


「アンタの口から言うんだよ。そうじゃなきゃ、アンタはきっと、一生変われない」


きっぱりと、それだけを言った彼は口を噤んだ。

陸斗くんの言葉はいつだって、私の心を、強く叩く。

ぶっきらぼうで遠慮がなくて……それでいて優しい、彼の言葉だ。

私は彼の言葉を貰うたび、もう少しだけ、自分を主張してもいいんじゃないかと思える。

言いたいことは、きちんと言う。

何も引け目を感じずに──堂々と、顔を上げたいと思うんだ。

 
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