腹黒王太子の華麗なる策略
一礼してラルフが部屋を出て行くと、俺は椅子から立ち上がった。

だが、疲れが出てガクンと膝折れ、胸がズキッとひどく痛んだ。

誰も見ていない時で良かったと思う。

こんなところ……アンやラルフに見られたら、最悪だ。

思った以上に消耗しているな。

いつも魔力を使った時は、こんな風に倒れそうになり、胸が痛くなる。

胸の痛みに効く薬はない。

じっと痛みが引くのを待つしかないが、魔力を使い続ければ、そのうち痛みも引かなくなるかもしれない。

だが、そんなちょっとした不安が、命取りとなる。

悪魔は人の弱味につけこむのだ。

「まだまだ鍛錬が足りないか?」

俺の無様な姿を見てルシファーが嘲笑っているような気がする。

奴の強大な力を使いこなすには、強靭な肉体と強い精神力が必要だ。

フィオナにそれを知られてはいけない。

「まずは身体を回復させないと……」

ふらつく身体で再びベッドに戻り、アンを後ろから抱き締めて俺は眠りについた。
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