腹黒王太子の華麗なる策略
「クリス様が使う魔力はとても強大なものです。例えば、数万の兵を一度に倒すことも簡単にできますが、その分クリス様もかなりのダメージを受けます。いわば諸刃の剣。私はできればクリス様に魔力を使って欲しくないのですが……注意して聞く方ではないんですよね」

ラルフ宰相はそう説明して困ったように笑った。

……本当に私は何も知らなかったんだ。

落ち込まずにはいられない。

それに諸刃の剣である魔力を、私はクリスに使わせてしまった。

クリスの身体はかなり消耗しているはず。

今、眠っているのがその証拠だ。

なのに、昨日は……私の治療を優先した?

「食事と着替えはコレットに持ってこさせますから、あなたはそのままクリス様のお側にいてあげてください」

ラルフ宰相の言葉に私はハッと我に返る。

「……はい」

小さく返事をすると、ラルフ宰相は部屋を後にした。
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