腹黒王太子の華麗なる策略
「そんな風に泣くから言えなかった。昔から……アンに泣かれると弱いんだ」

優しい声で囁き、クリスは私の涙を拭う。

「ク……クリスの……馬鹿」

しやくり上げる私をクリスは包み込むように抱き締めて謝った。

「ごめん」

「本当に……馬鹿だよ」

私の言葉に相槌を打ちながら、クリスは静かな声で言う。

「そうだな。俺はこの世で一番の愚か者だ」

それからどれくらい彼の胸で泣いていたのだろう?

少し落ち着いてくると、クリスは穏やかな声でフィオナが国王を毒殺したことをきっかけに悪魔と契約したことを語り出した。

彼の黒い爪は悪魔との契約のしるしで、胸のあざは魔力を使えば使った分だけ大きくなるらしい。

国王がすでに死んでいたことにも驚いたけど、クリスが契約した悪魔がその最高位のルシファーで、クリスの胸のあざが全身に広がれば彼はルシファーに身体を乗っ取られて死ぬと聞いて愕然とした。
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