腹黒王太子の華麗なる策略
ショックで何も言葉も発しない私に、クリスは私を安心させるように告げる。

「大丈夫だ。俺は死ぬつもりはない。お前がいるからな」

その目は綺麗な光を宿していて、今の状況を悲観してはいなかった。

それを聞いても安心はできない。

また涙が溢れてきて、泣きながらクリスに懇願した。

「お願い!……もうひとりで背負わないで。私にも……クリスの悩みを……分けて!」

「わかった」

クリスは躊躇わずに穏やかな声ですぐに返事をする。

だから、私にはわかってしまった。

これは、嘘だ。

きっと彼はまた全部ひとりで抱え込むだろう。

クリスはそういう人。

だったら、私が彼を守らなきゃ。私が……。

彼の腕の中でそう心に誓った。
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