腹黒王太子の華麗なる策略
『無駄だ。お前には先を見通す才がない。素直に剣術の練習をした方が身のためだぞ』

『この腹黒、意地悪、冷酷、冷徹、悪魔!』

ディオンは俺をじっとりと見て思いつく限りの悪態をつく。

『それは、俺への賛辞か?』

クスリと笑ってディオンをからかったその刹那、侍従長のダクトスがノックもせずに部屋に駆け込んできた。

『ク、ク、クリス様~!』

息急き切って現れたダクトスは、真っ青な顔をして俺の前に立った。

『そんなに慌ててどうした、ダクトス?』

ダクトスの様子を最初は余裕顔で眺めていた俺。

『フィ……フィオナ様が陛下に……ど、毒を盛りました!今、宰相殿が……』

そこまでしかダクトスの声は耳に入らなかった。

宰相というのは、ラルフの父親のグレンのことだ。

すぐに席を立ち、ディオンと共に部屋を飛び出した。
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