腹黒王太子の華麗なる策略
父が動く様子はない。

ディオンが父の元に駆け寄り、腕を取って脈を確認する。

『兄上……もう死んでる』

残念そうに首を横に振るディオンの言葉を聞いて、グレンは涙を流した。

『……私が手傷を負わせたので……フィオナはまだ陛下が亡くなったことを知り……ません』

そう言って、グレンはゲホッと血を大量に吐く。

『俺がフィオナを捕まえる!」

ディオンは剣を抜き、俺が止める間もなくフィオナを追った。

父が亡くなったことよりも、今にも死にそうなグレンの姿を見ていられなかったのだろう。

宰相はディオンの剣術の師なのだ。

『クリス……様、インヴァネスを……お守り…くだ……さ……い』

最後の力を振り絞って俺の手を掴み、グレンは息を引き取った。

無念さが滲み出ているその顔。

『……わかった』
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