腹黒王太子の華麗なる策略
アンを透視しようとしたが、この膜と瘴気のせいか、何も視えなかった。

「俺が休んでいる間にこんなものを仕掛けるとは……」

右手を上げて瘴気ごとこの身に吸い込もうとしたら、不意にコレットの声がした。

「無茶し過ぎよ、王太子さま。そんなことしたら自分の身が滅ぶわ。ここは私に任せなさい」

俺の前に姿を現したコレットはフフッと笑い、自分の胸をトンと叩く。

「お手並み拝見といこうじゃないか」

腕を組んでコレットに目を向けると、彼女は躊躇うことなく指を噛んだ。

そして、コレットは流れた血で魔法陣を素早く描き、何か呪文を唱える。

すると、瘴気が魔法陣の中へ吸い込まれた。

城を覆っていた膜も次第になくなっていく。

「へえ、なかなかやるじゃないか」

感心したように言えば、コレットは悪戯っぽく目を光らせ俺を見た。
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