腹黒王太子の華麗なる策略
ギュッとアンを抱き締めて声をかけ、また彼女を寝かせる。

そして、彼女の足元に移動して患部に口を当て毒を吸い取った。

「ああ〜!」と声を上げ、アンは顔を歪める。

彼女の声を聞いてやめたくなったが、ここで治療を中断するわけにはいかない。

毒をある程度吸い出したら、最後に傷が癒えるようにゆっくり口づけた。

すると、次第に傷は跡形もなく消えていく。

「どうだ?」

足を優しく撫でながらアンに目を向ける。

彼女は息を整え、口を開いた。

「……うん、平気。クリス……なんか……眠い」

アンの目はトロンとしてる。

この顔、夢とうつつの間をさまよっている感じだ。

この寒さで相当体力を奪われたのだろう。

「まだダメだ。この冷たい服をどうにかしないと凍死するぞ。アン……?」

< 212 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop