腹黒王太子の華麗なる策略
「大丈夫だ」

その温かい手は、いつだって私を導いてくれる。

うん、大丈夫。

クリスに微笑み、彼と一歩一歩洞窟の奥へ進む。

棺の前まで来ると、モコは座り込んだ。

棺の上部はガラスのように透明で、ラミレス王は目を閉じて眠っている。

その手には、聖剣が握られていた。

聖剣の鞘は様々な色の宝石で装飾されていて、光輝いている。

古文書にはラミレス王は死んだと書かれていたが、目の前の彼は特に怪我のあともないし、ただ眠っているように見えた。

「これがラミレス王……」

それしか言葉が出てこなかった。

図書室で見た立体画の人物が目の前にいる。

しかも、この人は私の父かもしれない。

目頭がカアーッと熱くなって、涙が込み上げてくるのを必死で堪える。

「今にも目を覚ましそうだな」
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