腹黒王太子の華麗なる策略
「死んではいない。人間にこの世の統治を任せて眠りについたのだ」

ラミレス王が死んでいたら、私は生まれて来なかった。

それに、クリスにも出会えなかったんだ。

いろんな思いが込み上げてきて、涙が頬をつたる。

その涙をラミレス王は手を伸ばして拭った。

少し彼に触れられただけで、身体が温かくなるのを感じる。

「娘よ、よく来た」

そう言って、ラミレス王は私を抱き締める。

気づけば、私は彼の纏う光に包まれていた。

ラミレス王はお日様のいい匂いがする。

私が落ち着くと、彼は抱擁を解いてモコに目を向けた。

「モコ、久しぶりだな」

ラミレス王早くモコに手を伸ばし、モコの毛を撫でる。

彼が『モコ』と呼んでいるということは、彼が名をつけたのだろう。
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