腹黒王太子の華麗なる策略
クリスが母を剣で刺して……それから、母の顔がシワシワになって……。

どうしてこんな大事なことを忘れていたのだろう?

それに、どうしてクリスは母を殺したの?

彼も私の母が好きだったはずだ。

なのにどうして……。

「あ~、わからない。わからない!」

私は大きく首を振った。

「聖剣を渡せ」

フィオナの声がすぐ目の前で聞こえたが、今の私には彼女の姿は見えなかった。

フィオナだけじゃない。

私の瞳は何も映さなくなった。

ガルゥ~とモコがフィオナを威嚇する声が聞こえる。

「アン!フィオナの声を聞くな!」

クリスの声がしたが、今の私は何を信じていいのかわからなかった。

聖剣を杖代わりにして何とか立ち上がるが、もう騎士達に向かっていく気力はない。

今の自分は無気力だった。
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