腹黒王太子の華麗なる策略
「クリスは……どうしてお母さんを殺したの?」

アンは瞳を潤ませ、俺を責める。

「アンにはそう見えたかもしれない。だが、アンのお母さんを殺したのはフィオナだ」

俺の説明にアンは微かに目を見開き、沈黙を守る。

「すぐには信じられないかもしれない。三年前のあの日、まずフィオナは俺の父を毒殺し、次にラルフの父グレンを殺した。俺がフィオナを追いかけたら、お前のお母さんを手にかけていて……そして、顔を奪ったんだ」

〝顔をはいだ〟なんて残虐なことは言えなかった。

母親が酷い死に方をしたと知ったら、さぞかしアンは胸を痛めるだろう。

アンを刺激しないよう婉曲的な表現をしたが、彼女はイマイチピンとこなかったのか、俺に聞き返す。

「顔を奪っ……た?」

「そう。アンのお母さんの顔を奪って、フィオナは仮面のようにつけた。アンが見たのはお母さんではなく、フィオナだったんだ」

< 261 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop