腹黒王太子の華麗なる策略
なるべく生々しい言い方は避け、端的に事実だけをアンに伝えた。

あの時の血生臭く、狂気に満ちた情景を想像して欲しくなかった。

「どうしてお母さんの顔を奪ったの?」

アンの関心がフィオナの動機に移り、安堵した。

どうやって顔を奪われたか聞かれるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたんだ。

「フィオナが魔女なのは知っているだろう?あれは三十歳くらいに見せていたが、実際は何百歳にもなる婆さんだ。若い娘の生き血を啜ってあの若さを保っていたが、それだけでは飽き足らず悪戯に美しい女の顔を奪っては、仮面代わりにして楽しんでいた。アンのお母さんは綺麗な人だったからな。フィオナの目に留まったのだろう」

「そんな……ひどい」

悲痛な表情でアンは口に手を当てる。

フィオナの残虐非道な行為を聞いて、彼女の顔は顔面蒼白になった。
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