腹黒王太子の華麗なる策略
アンはシャメルに向け、俺は聖剣を握る彼女の手に自分の手を添えた。

「聖剣よ、邪心を取り払え!」

ラミレス王の姿を想像しながら俺がそう叫ぶと、聖剣はまるで生き物のようにシャメルの身体から黒い煙のようなものを吸い込んでいく。

恐らくこれがシャメルの邪な心なのだろう。

聖剣が邪心を吸い込むと、シャメルは気を失った。

騎士を全員倒したのか、ディオンとラルフもモコを連れて戻ってきた。

「クリス様、全員倒しましたが、急所は外しています」

ラルフは剣を鞘に収め、俺に報告する。

「それでいい……」

ラルフに頷いたその時、一気に身体の力が抜け、俺は地面にへたり込んだ。

「クリス!」

みんなが慌てた様子で俺を呼ぶが、その声もどこかと遠くで聞こえているような気がした。

これは本気でマズイかもしれない。

身体の限界はとっくに超えていた。
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