腹黒王太子の華麗なる策略
「本当?」

「ここで嘘を言ってどうする?」

ディオンは私を安心させるようにニヤリと笑ってみせた。

「早くクリス様の胸の傷を手当てしましょう」

ラルフは私とコレットに声をかけた。

「この胸に刺さった剣、抜いて血が出ないかしら?」

コレットは聖剣に目を向けると、眉根を寄せた。

「城まで運んでから抜いた方がいいですかね?」

ラルフもクリスの命がかかっているだけに迷っている。

「それじゃあ、手遅れにならないか?」

ディオンは不吉なことを言う。

そんな彼をドンとど突き、私は言い放った。

「私が絶対に死なせない!」

クリスは言ったもの。

私には癒しの力があるかもしれないって……。

私は古の王ラミレスの娘だ。

お父さん……今だけでいい。

私にその力を貸して下さい。
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