腹黒王太子の華麗なる策略
心の中でそう祈ると、クリスの胸に刺さっている聖剣を思い切り抜いた。

「お、おい、大丈夫なのか?」

私の行動に驚いたディオンが、慌てた様子で私の顔を覗き込む。

「集中するから、邪魔しないで」

ギロッとディオンを睨み、クリスの胸に自分の手を当てた。

ディオンと言い争ってる場合じゃない。

クリスの心臓の鼓動を感じる。

彼だって必死に頑張っている。

治って……。

お願いだから、また目を開けて私を見て!

そう願った時、私の手にもうひとつ手が重なるのが見えた。

その手は光に包まれていて、驚いて思わず振り返れば、父が私に力を貸してくれていた。

私に優しく微笑む父。

周りにいるみんなは、ラミレス王に気づいていない。

ひょっとしたら、私にしか彼の姿は見えていないのかも。
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