腹黒王太子の華麗なる策略
「こ、こ……これは……嬉し涙だもん」

喉を詰まらせながら言い訳する私の身体を捕まえて、クリスは自分の胸に抱き寄せた。

「意地っ張り。もう大丈夫だ。心配かけたな」

私を安心させるようにそう言うと、クリスは私の身体を強く抱き締めた。

それは、まるで自分が生きていることを実感しているかのよう……。

私はクリスが生きていることを父に感謝しながら、彼の胸に頰を寄せた。

「これで一件落着ね」

コレットがホッと胸を撫で下ろす。

「城に戻ったらみんな忙しくなりますよ。クリス様には休養が必要ですし、ディオン様しっかり働いてくださいね」

ラルフはチラリとディオンに目を向け、釘を差す。

「……お前、俺の扱い酷くないか?少しは敬えよ」

「人に文句を言う言う暇があったら、少しはクリス様の有能さを見習ってください。だいたいあなたは……なんですよ!」
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